第五回:誘う窓 〜 侵入者は見逃さない

提供:Wiki@KDS
ナビゲーションに移動 検索に移動

誘う窓 〜 侵入者は見逃さない

 夏の夜、少しだけ窓を開けて就寝する…そんな人が意外といるようだ。
建物の1階なら、わりあい注意して窓を開け放すことは少ないだろうが、2階以上になると無防備に開けたままであったりする。
他人の家の窓がどうなっているか、普通は誰も気にしないが、開いている窓を探す人物がいるのである…。

 エアコンが普及しても、どうしても冷房が身体に合わないとか、だるくなるからと言って、就寝時には使わないとかいう話をよく聞く。
特に女性に多いようだが、とはいえ閉め切った室内のままでは居られないとなると、窓を開け放すことになる。

 2階以上のフロアーでは、ベランダやバルコニーなどの窓の施錠率は1階に比べると断然低くなる。
中・高層住宅の上の方の階となると、「ベランダのカギなんかかけたことがない」という家が実に多い。
1階と違って、誰も窓からは入って来ないだろう、という思い込みである。

 しかし、何階であっても集合住宅なら続いて隣の家があることを忘れてはならない。
上下左右、どこかしらとつながっている。となると、よその家に入った泥棒が、ベランダ越しに入って来ないとどうして断言できるだろうか。
または、次のようなケースもある。

 8階建ての最上階に住んでいる三十代の女性が、涼しい風が入ってくるため、またエアコンが苦手なため、いつも窓を少しだけ開けて就寝していた。
ある深夜、ふと寝返りを打った時に、知らない男が自分を見下ろしていることに気がついた。

 (玄関のカギは間違いなくかけたのに!)愕然と目を見開いた彼女の前に、包丁が突き出された。

 「か、金を出せ」

 うわずった声が震えている。包丁を持った両手もガクガクと揺れている。

 それを見て、しっかりした気性の彼女は男に話しかけた。

 「このまま何もしないで自首してくれたら告訴しないと約束する。こんなことで人生を無駄にしないで」

 家族もいるのでしょう、という言葉に、男は手を下ろし刃物を置いた。男の同意を得て警察を呼び、1件落着。
事なきを得た。近所に住む友人に電話をして来てもらい、その顔を見た瞬間、ホッとした彼女はへなへなとしゃがみ込んだのだった。

 その後、判明したのは、男はなんと建物の屋上から女性の家のバルコニーに降り、侵入したことだった。
そして「窓が開いていることが分かったので侵入しようと思った」と知らされた。
建物の上の方の階、最上階であっても侵入されることがあるのだと、この女性は我が身をもって知ったのである。

 また、アパートの1階に住んでいる大学1年の女子学生は、ある夜、人が居る気配で眠りから覚めた。
薄目を開けて見ると、暗がりの室内に見知らぬ男の後ろ姿がある。バッグを探っている様子で、恐怖のあまり身動きできず、
眠っているふりをしていると、やがて男は窓からそっと出ていった。

 玄関のカギはかけてあったのだが、庭側の窓を少し開けていたのだ。乱暴はされなかったものの、現金を奪われ、恐怖を味わった。
彼女は、地方の実家に居た時に、窓のカギをかけるという習慣がなかったため、独り暮らしを始めても窓のカギをかけたことがなかったのである。

 さらに、この春逮捕された連続婦女暴行犯人の数十件に及ぶ犯行の最後の場所となったのは、都内のマンション2階に住む24歳の女子学生の部屋だった。
この後、犯行時に使用したクルマの目撃情報から足がつき逮捕されたのだが、やはりカギをかけていないベランダの窓から侵入したものだった。

カギがついているのは
施錠する必要があるから

 集合住宅などを離れたところや道路からよく見てみると、どの部屋の窓が開いているか、すぐに分かる。
窓枠と窓はいずれも四角形のため、完全に閉まっていれば2つの四角形が並んだ形でしか見えない。
ところが、少しでも窓が開いていれば、窓の縁の縦のラインが窓枠からずれた位置に来るので、細長い四角形ができて見えることになる。
これが、窓が閉まっていないことの証となるのだ。若い女性が多く住むような2階建てのアパートでは、外から眺めてみるとどの部屋が窓を開け放しているか一目瞭然だ。

 2階といっても、塀や電柱などを伝って侵入されてしまうことがある。身の軽い犯人なら、2階など苦もないだろう。
上の方の階でも、上記のケースのように屋上から降りてこられたり、建物の構造上、非常階段などから侵入される恐れのある部屋もあるし、隣戸からのベランダ伝いの侵入もあり得る。

 被害を受けないためには、自分の住まいをドロボウの気持ちになって客観的に見直してみるとよいだろう。
侵入しやすいかどうか見極めて、対策を考えよう。そして、原則として窓のカギはかけるべきである。

 なぜカギがついているのか? 施錠する必要があるからだ。カギのあるところはすべてかけるべきだ。

 それでも、エアコンをつけたまま寝るのはどうしても苦手、窓を少し開けていたい…というのなら、防犯ブザーやアラームなどの警報装置を取り付けよう。
窓と窓枠にフックを付けて防犯ブザーをセットし、窓がある程度以上開けられたら絶縁ピンがはずれて音が出るようにする。
窓用のアラームも各種販売されているので用途に合ったものを選ぼう。

 夜間、窓が少し開いていて、その上、女性の下着などが洗濯物として干されたままになっていると、
「この部屋には女性が住んでいます。窓も開いています」と、公表しているようなものだ。
外から見える“個人情報”である。侵入者はそんな部屋を見逃さない。そしてこう思うだろう。「あの窓が誘っている」



第六回:個人情報管理術